新進女性R&Bシンガー サマー・ウォーカー『Over It』
こんにちは。
最近のR&Bシーンは、若手女性シンガーの活躍が目立っています。特にエラ・メイとH.E.R.は人気が高く、自身の曲がチャート上位にランクインするのはもちろん、客演シンガーとしてもひっぱりだこで、いろいろなところで彼女たちの名前をみかけます。
そんな女性シンガー戦国時代に、またひとり強力なライバルが現れました。R&Bのメッカ、アトランタから登場したサマー・ウォーカー(Summer Walker)です。2018年にミックステープを発表した彼女は、2019年にデビューアルバム『Over I『を発売。広くR&Bファンにその名を知られるようになりました。
ということで、サマー・ウォーカーのデビューアルバム『Over It』を聴いてみました。そして、「この作品は、今時のR&Bをよく表しているな」と思いました。そのうえで感じたのは、「今時のR&Bは、メロディーラインをそれほど重視しない」ということです。なんていうか、歌があって、それに伴奏がつくというより、伴奏ファーストで、そこに歌がまぎれこんでいるように感じるんですよね。歌がどうこうではなく、全体的な音として気持ちよく感じられるものが、求められている時代なんだと思いました。こういう状況だと、ベイビーフェイスみたいな人は苦労するでしょうね。彼は今のR&Bシーンを、どう思っているのでしょうか…。
さて、 サマー・ウォーカー の 『Over It』に話をもどしましょう。アルバムジャケットを見たとき、彼女の装いがラッパー風だったので、にぎやかな中身を想像していました。しかし実際に聴いてみると、予想よりも落ち着いた雰囲気でした。全体的にテンポはダウン気味で、けだるいムードです。その状態で気持ちがいいと感じる音が続いていき、そこに、うまく彼女の歌がはまるという感じでした。
歌い手としてのサマー・ウォーカーは、中低音域に魅力があると思いました。その中低音域を使って歌われる”Body”や”Playing Games”が、アルバムの中でもよい出来だと思いました。 ”Body” には、90年代の女性グループ702の”Get It Together”が、また ”Playing Games” にはデスティニーズ・チャイルドのヒット曲”Say My Name”がうっすらと使われています。このような90年代R&Bネタ使いにも、よい印象を持ちました。
そして90年代 R&Bネタ の最たるものが、アッシャーの”You Make Me Wanna…”を使った”Come Thru”です。こちらにはアッシャーご本人が登場して、サマーとのデュエットを聴かせてくれます。サマー・ウォーカーの若々しさと、ベテランとなったアッシャーの余裕のある歌声との対比が、聴きどころです。
女性R&Bシンガーの注目盤、サマー・ウォーカーの 『Over It』。ぜひ聴いてみてください。