ついに表舞台へ!『Jam & Lewis, Vol.1』【全曲紹介】後編



前回に続き、ジャム&ルイス(Jam & Lewis)のデビューアルバム『Jam & Lewis, Vol.1』より、後半の収録曲をご紹介します。

6曲目は、実力者トニ・ブラクストン(Toni Braxton)をフィーチャーした ”Happily Unhappy” です。ゆったりした包容力のあるバラードで、トニの落ち着いた大人のヴォーカルに癒されます。なんとなく東洋風なところも、ジャム&ルイスらしくていいですね。トニ・ブラクストンの最近の作品は、この曲も含めて素晴らしいものが多いので、ぜひ聴いてみてください。

7曲目の ”Maybe I’ve Changed (Or Did You)” も心に沁みるバラードで、ヘザー・ヘッドリー(Heather Headley)がヴォーカルを務めています。ヘザーはこれまでに登場した人たちに比べると、知名度はやや低めですが、もともとミュージカル女優として成功した経歴を持つ実力派です。この ”Maybe I’ve Changed (Or Did You)” のオーソドックスな雰囲気は、彼女の美声をよく引き立てていますね。

8曲目 ”Do What I Do” のゲストは、大ベテランのチャーリー・ウィルソン(Charlie Wilson)です。トークボックスを使ったコーラスやTR⁻808による軽快なリズムなど、この曲は80年代らしさが満載です。肩の力を抜いて楽しめる曲で、歌っているチャーリーのキャラクターにもよく合っていると思います。大ベテランでありながら全く現役感を失っていないチャーリーのパワフルなヴォーカルに、今回も心から拍手を送りました。

9曲目の ”Do It Yourself” は、アッシャー(Usher)がフィーチャーされています。曲は80年代風で、プリンスが得意にしていたロック調のバラードのような雰囲気があります。アッシャーの歌はプリンスほどのワイルドさはないものの、ファルセットなど丁寧な歌いぶりで、R&Bの代表選手としての実力をみせてくれました。

10曲目は、”Babylove” 。登場するのは、80年代にザ・タイム(The Time)というバンドでジャム&ルイスとともに活動していたモーリス・デイ(Morris Day)&ジェローム(Jerome)、それからザ・ルーツ(The Roots)です。タイム、懐かしいですね!この ”Babylove” という曲がまた、往年のタイムを彷彿とさせるファンキーでグルーヴィーなナンバーなのが泣かせます。どうせならタイムのメンバーをそっくり呼んできてほしかったですが、演奏部分はルーツに依頼することで、時代感覚の調整を図ったのでしょう。さすがはジャム&ルイス、しっかりしています。前曲のプリンスに続いてタイムを回想させながら締めるという流れは、いいですね。ジャム&ルイスが、彼らの出自であるミネアポリス・ファンクを大切に思っていることが、よくわかりました。

以上、ジャム&ルイスの『Jam & Lewis, Vol.1』をご紹介しました。全10曲、どれも慣れ親しんだR&Bで、大変聴きやすいアルバムでした。

今回ジャム&ルイスの作品を聴いて、改めて思ったこと。それは、彼らがR&Bの基本である「歌」を大事にするという目線を持ち、演じ手である歌手の魅力を引き出すことを第一に考え、かつそのための高い能力を有している、ということです。ジャム&ルイスの作る音楽は、音色が派手だったり、リズムが斬新だったりする曲も多く、それが彼らの特徴ともされています。しかし、どんなに賑やかな仕掛けであっても、それらは決して歌の邪魔をしないのです。R&B界で歌の存在感が薄れつつある昨今、ジャム&ルイスのようなプロデューサーは貴重なので、今後も末永くお二人には頑張ってほしいです。そしてそれと同時に、彼らのマインドを受け継ぐ若きプロデューサーの登場にも、期待したいと思います。

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