良質なディスクガイド本「新R&B入門」
今の日本で、洋楽R&Bの人気は
どうもいまひとつ、のようなんです。
そういえば、老舗の黒人音楽専門誌
「bmr(ブラックミュージックレビュー)」は
もうだいぶ前に休刊になってしまったし
(現在はウェブサイトbmrとして情報発信中)
CD店のR&Bコーナーも、縮小された気がしないでもない…。
そんななか、ひとつの事件が起きました。
2014年12月の、ディアンジェロ(D’Angelo)の新譜
“BLACK MESSIAH”の発売です。
発売されるやいなや、R&B界のみならず、
各方面から絶賛の声があがりました。
ほとんど騒動といってもいいような盛り上がりぶりに
「ディアンジェロって、そんなに人気があったのか」
と、私はびっくりしてしまったのです。
なにはともあれ、このディアンジェロ人気が、
洋楽R&B全体の人気上昇につながってくれればいいな、
と思ったのは、私だけではなかったようです。
こんな本が出版されました。
「 新R&B入門
ディアンジェロでつながる
ソウル・ディスク・ガイド 1995-2015 」
著者は、R&B/ソウルの評論でおなじみの
林剛さんと、荘治虫さん。
私は雑誌bmrのころから、おふたりの著作を
読んでいますが、おふたりとも、
信頼できる評論家の方、という印象を持っています。
ディアンジェロを通じて、洋楽R&Bのことをもっと
知ってもらおう、という意図で出版された本のようです。
この本、サイズは一般的なガイド本と比べて
少し小さめです。CD店巡りに携行するのにも便利な
コンパクトサイズ。
中はカラー印刷で美しく、レイアウトもシンプルで
見やすい紙面になっています。
内容のほうは、大きく二つに分けられます。
前半は、ディアンジェロの音楽活動について書かれてています。
アルバムレビューはもちろんのこと、
どこそこに客演したとか、どこそこの曲をカバーしたとか
事細かに記されています。
ディアンジェロのことをよく知りたいと思う人には
その要望に十分応えてくれる、充実した内容だと思います。
そして後半は、ディアンジェロと同様に
70年代ソウルに影響を受けた、現代のR&Bアーティスト
のアルバムが紹介されています。
まずは聴いてほしい定番作品から、うっかり見落としてしまいそうな
隠れた名品まで、様々な作品が登場します。
「ディアンジェロにつながっているかどうか」を基準にして
アルバムが選ばれているので、一般的なディスクガイドに比べて
独自性があり、それがこの本の面白さになっていると思います。
音楽好きの皆様におすすめしたい良書「新R&B入門」。
ぜひ、お手にとってご覧ください。
D’Angelo, The Vanguard – Really Love (Live on SNL)