90年代のベスト盤が発売 メアリー・J・ブライジ『HERstory Vol.1』
こんにちは。
「クイーン・オブ・ヒッピホップ・ソウル」といえば、メアリー・J・ブライジ(Mary J.Blige)です。衝撃的なアルバム『What’s the 411?』でデビューを飾ったのが、1992年。それ以来今日に至るまで、時代の空気を取り込みながら、常にエネルギッシュな作品を発表し続けています。
私が彼女の音楽を初めて聴いたときは、正直言って「力強さはあるけれど、歌唱力的にはイマイチかな」と思いました。しかし、彼女の放つオーラがすさまじく、それに引き込まれて聴いているうちに、すっかりファンになってしまいました。デビュー時に懸念された歌唱力も、今では全く問題ありません。「クイーン・オブ・R&B」といってもよい存在になったと思います。
そんなメアリー・J・ブライジ のベスト盤『HERstory Vol.1』が、先日発売されました。今回のベスト盤は、私が最も気に入っているキャリア初期(92〜97年)の作品から選曲されています。そして、代表曲を網羅する一般的なベスト盤とは、ちょっと異なる趣向になっています。「オリジナルアルバムには未収録だけれど、ぜひ押さえておきたい名曲」が、多く集められているのです。ソウルの名曲をネタにしたリミックスや、他アーティストとの共演曲などなど。これまでこうした楽曲は、聴く機会を逃しがちでした。それが今回、ひとつの作品集としてまとめられたことで、とても聴きやすくなりました。メアリーファンには嬉しいベスト盤だと思います。
それでは、収録曲をいくつかご紹介していきましょう。まずは、オープニングの”You Remind Me”です。記念すべき彼女のソロデビュー曲で、1992年に発表されるやたちまち人気となり、R&Bチャートの1位に輝きました。メロウな曲調、ヒップホップの乾いたリズム、情が深く憂いを帯びたヴォーカルに印象的なコーラス、これらが一体となって、独特な世界を作り上げています。一度聴いたら忘れられない、R&Bの名曲。私の大好きな曲です。
次は、メソッド・マン(METHOD MAN)の”You’re All I Need”です。メアリーはゲストヴォーカルとして参加しています。主役はラップなので、幾分控えめな歌いぶりですが、そうであっても、すごい存在感を発揮するのが メアリー・J・ブライジ という人です。この曲の元ネタは、モータウン・クラシックとしてもおなじみ、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルの ”You’re All I Need To Get By” です。メソッド・マン版は、オリジナルとは真逆の、スリリングな仕上がりになっています。
それから、”Everyday It Rains”もおすすめです。メアリーの曲は映画のサントラ盤に使われることが多いのですが、これもそのひとつで、ヒップホップのドキュメンタリー映画「THE SHOW」のサントラ盤(95年)に収録されていました。フェイス・エヴァンスが得意とするようなしっとりしたメロウ・ナンバーで、メアリーはせつない想いをひたむきに歌い上げています。
メアリー・J・ブライジ のベスト盤『HERstory Vol.1』は、聴きどころが多く、とても興味深い内容でした。次は、Vol.2ですね。楽しみに待ちたいと思います。