平成のR&Bを聴く メアリー・J・ブライジ『Mary』



こんにちは。

平成のR&Bを聴くシリーズです。今回ご紹介するのは、メアリー・J・ブライジ(Mary J .Blige)のアルバム『Mary』です。オリジナルのスタジオ録音盤としては4枚目、リミックスやライブも含めると6枚目になるアルバムです。発売されたのは1999年(平成11年)ですから、今年で発売20周年を迎える作品です。『Mary』が発売された今から20年前、私は大阪・心斎橋にあったタワーレコードに通い詰める日々を送っていました。タワレコのビルの外壁一面に『Mary』のジャケットの看板がでかでかと飾られていたのを思い出します。それくらい、当時の音楽界で、この作品の注目度は高かったのです。

メアリー・J・ブライジ は ヒップホップの強いビートの上に、さらにパワフルな歌をのせて表現することを得意とし、「クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル」と呼ばれていました。彼女の音楽は「ストリート」とか「ゲットー」という言葉とともに広まり、若者の熱烈な支持を集めました。ところが、アルバム『Mary』は、そのような路線とはちょっと違っていたのです。ヒップホップ・ソウルのヒップホップの部分を控えめにし、ソウルの部分にフォーカスしたような作品になっていました。それまでと違って落ち着いた雰囲気を醸し出すメアリーに対し、私の周囲では評価が分かれました。「おとなしくなってしまい、物足りない」という人もいれば、「ソウルフルで素晴らしい」という人もいました。私は後者のほうで、このアルバムが気に入っていました。

そして2019年になり、久し振りに『Mary』を聴いてみて、やっぱりこれはいいな、と思いました。彼女の歌唱力の面からいえば、完成まであと一歩という段階だと思いますが、心を歌にして伝えようとする、そのまっすぐな姿に胸を打たれました。以前から、メアリーは70年代ソウルのエッセンスを作品に取り込んできましたが、『Mary』では、その傾向が一段と強くなっています。 マイケル・ジャクソンをサンプリングしたり、ギャップ・バンドをカバーしたり、アレサ・フランクリンとデュエットしたりと、70’sネタが盛りだくさん。特に最近、70年代ソウルを愛聴している私には、好ましく思える内容でした。そして、これが結構重要なんですけど、このアルバムは音がいいんですよね。全体的に音色が美しく、そこも大きな魅力でした。

おすすめの曲を挙げるなら、まずは”As”ですね。これはスティービー・ワンダーのカバーで、ベイビーフェイスがプロデュースしています。ジョージ・マイケルとのデュエット・ナンバーになりますが、ジョージとメアリーという、まったくタイプの違うシンガーの掛け合いが興味深い一曲です。洗練されて優美なジョージの歌に、野性的なメアリーの歌が斬り込んでいくところがこの曲のおもしろさで、特にメアリーのシャウトがすさまじく、圧倒されました。そしてもうひとつのおすすめが、ファースト・チョイスのカバーの”Let No Man Put Asunder”です。これは70年代フィリー・ダンサーの人気曲をカバーしたものですが、あまりにもメアリーにぴったりで、驚いてしまうほどでした。パワフルに生き生きと歌う姿が、とてもかっこいいです。数ある彼女のカバー曲のなかでも、素晴らしいパフォーマンスだと思いました。

発売から20年、メアリー・J・ブライジ 『Mary』。
ぜひ、聴いてみてください。

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