ずっと大切に聴きたい エリック・ベネイ『Hurricane』

こんにちは!
今回は、2005年に発売されたエリック・ベネイ(Eric Benet)のサードアルバム『Hurricane』をご紹介します。

私は先日、久しぶりに中古CDを探しに出かけ、そこでこの『Hurricane』をみつけました。お値段なんと、73円。税込みで、80円。税込み価格が二ケタの中古CDというものを、初めて見ました。ちなみに、同じ店内で売られていた”うまい輪やさいサラダ味”は、税込みで88円でした。「エリック、うまい輪に負けたのね…」と、どこか寂しい気持ちになりながら、うまい輪と『Hurricane』を購入して、帰宅しました。

さっそく聴いてみたのですが、なぜ私が2005年の発売当時にこのアルバムを買わなかったのか、思い出しました。この作品は、一言で言って「R&Bっぽくない」のです。私はそのころ、ノリノリでグルーヴィーなダンスミュージックや甘くてトロトロのバラードなど、いわゆる”R&Bらしいサウンド”を求めていました。なので、このアルバムを試聴したときに「なんか違うな」と思ったのです。

しかし16年の時を経て、今改めて聴いてみると、これがなかなか良いのですよね。生演奏をバックに、じっくりと歌を聴かせる、オーソドックスなつくり。アコースティックギターやピアノのシンプルで澄んだ音色と、エリックの心のこもった歌声が調和して、聴いているととても癒されるのです。ひとつの音楽作品でも、聴く側のタイミングによって、受け止め方はいろいろ変わるのだな、と思いました。

アルバムのなかで印象に残った曲を、いくつかあげてみましょう。まずはタイトル曲の”Hurricane”です。アコーステッィクギターの静かな伴奏から始まり、徐々に音数が増えていき、クライマックスではストリングスも加わって盛り上がるという、ドラマチックなミディアムナンバーです。エリックのメロウな歌が、聴き手をセンチメンタルな気分にさせてくれます。特に、サビの「ハーリケーン」と歌うところが素晴らしく、グッときました。

それから”Pretty Baby”も、よかったです。この曲は、アルバムのなかで最もR&B的な雰囲気を持っていると思います。エリックのファルセットがセクシーで美しく、彼の持ち味が十分に発揮されていると感じました。

アルバム『Hurricane』では、数々のヒット曲で知られる名プロデューサー、デイヴィッド・フォスターが数曲プロデュースを担当しています。彼は、ジャンルを超えて、良質なポップミュージックをたくさん世に送り出してきました。そんな彼らしさがよく表れている曲が”The Last Time”ではないでしょうか。これはスタンダードジャズ風にアレンジされていますが、エリックは気負うことなく自然に、かつ堂々と歌い上げています。どんな曲を歌っても様になる、エリック・ベネイの歌手としての技量の高さを見た思いがしました。

エリック・ベネイは『Hurricane』以降は、R&Bに回帰したアルバムをいくつも発表してきました。直近の作品は2016年の『Eric Benet』になります。彼の集大成とも言われ、内容も素晴らしかったのですが、これで終わりでは寂しすぎます。1966年生まれで今年55歳になるエリックは、まだまだ若いです。また素敵なアルバムを出してほしいと思います。