平成のR&Bを聴く TLC『Fanmail』

こんにちは。

平成のR&Bを懐かしく聴くシリーズです。今回登場するアルバムは、1999年(平成11年)のTLCの『Fanmail』です。『Fanmail』はTLCの3枚目のアルバムです。前作『Crazysexycool』の驚異的な大ヒットから5年後に発売されました。少し間はあきましたが、「いつでも私たちはR&Bの最前線に戻ってこられるのよ!」という自信に満ち溢れた作品となりました。

発売当時のR&Bシーンは変則的なビートを使ったり、わざとザラつくような不協和音を仕込んだりして、斬新さを競っているような面がありました。歌い上げ系の歌手には厳しい時代だったと思いますが、TLCはもともと斬新さを売りにしてデビューしたグループだったので、無理なく時代の音に溶け込み、当時の最先端のR&Bアルバム 『Fanmail』 を作り上げました。

その内容を見てみると、彼女達がデビューしたころから関わっているダラス・オースティンが今回も参加しています。 TLC と ダラス・オースティン って本当に相性がいいんですよね。ダラスの曲って騒々しいくらいに派手な仕掛けがなされていますが、基本となるメロディーはわりとシンプルで聴きやすいんです。そのあたりが、「元気があって親しみやすい」 TLC のキャラクターとよく合っていたんじゃないかと思います。

さて、このアルバムの最大の注目曲といえば、やっぱり”No Scrubs”でしょう。それまで、T・ボズとレフトアイの陰に隠れがちだったチリが、堂々とした歌声を聴かせてくれるのです。哀愁漂うアコースティックギターと、せつなげなチリの歌がすごくよく合っていて「TLC にチリあり」と、世界中に知らしめる一曲となりました。これは当時の新進プロデューサー・シェイクスピアの制作で、TLC の代表曲になりました。

そして、ダラス・オ-スティンが関与した強インパクトな”Silly Ho”もすごかったです。いつまでも耳に残る、あのクセのある音使い。でも嫌みな感じはしないところが、さすがだなあと思いました。それと、”I’m Good At Being Bad”も面白い曲でした。清涼感のある歌のパートからはじまって、途中でファンキーなラップパートにチェンジします。私はレフトアイのラップが好きなので、楽しめました。この曲をプロデュースしたのは、ジャム&ルイスです。彼等なりの斬新さが感じられました。

また、”Unpretty”も全米で大ヒットしました。これはダラスの制作ですが、彼にしては素直な曲で、フォークっぽいR&Bでした。こういう、ちょっとした可愛らしさが、 TLC らしいと思いました。スロー系の楽曲では、”I Miss You So Much”と”Dear Lie”をベイビーフェイスがプロデュースしています。この頃、彼が好んでいたアコースティックギターを用いた、しっとりした曲です。ただ、あまりにもアコースティックなので、他のアップ曲との差が大きく、アルバムの流れがでこぼこした感じになってしまったのが、ちょっと残念でした。とはいえ、曲を単体で聴けば美しいですし、TLCの歌も、さわやかで良いと思いました。

1999年のR&Bの姿を映し出すとともに、TLCの個性が、より強調されたサード・アルバム 『Fanmail』。レフトアイの生前最後のアルバムでもあります。
ぜひ聴いてみてください。