シンプルで美しい音楽 アリシア・キーズ『Alicia』



こんにちは。
今回は、アリシア・キーズ(Alicia Keys)のニューアルバム『Alicia』をご紹介します。

アリシア・キーズは、1981年ニューヨーク生まれ。2001年に『Songs In A Minor』でアルバムデビューしたシンガーソングライターです。これまでに累計アルバムセールス4000万枚、グラミー賞で15冠に輝くなど、人気・評価ともに高いアーティストです。だいたい3〜4年に一回のペースでアルバムを出しており、音楽活動は順調です。

ニューアルバム『Alicia』は、彼女にとって7作目のアルバムです。前作『Here』からは4年ぶりとなります。『Here』が「黒人らしさ」を意識した、彼女にしては力強い骨太な内容だったのに対して、『Alicia』は穏やかな雰囲気を持つ曲も多い作品になっています。 全体的にシンプルな作りで、ひとつひとつの音の美しさが大事にされているという印象です。アリシアの美声は相変わらずで、オーガニックなサウンドとうまく調和し、時には優しく時には強く、聴き手の心に迫ってきます。今回も多彩なゲストが招かれ、曲の種類もわりと豊富なのですが、アリシアのポリシーがブレなかったからか、アルバムとしてよくまとまっていて聴きやすいと思いました。

収録曲をいくつかご紹介しましょう。オープニングの”Truth Without Love”は流行のラップシンギングのようなスタイルです。しかしどちらかといえばラップというより語りに近い感じで、ジル・スコットなどのネオソウル的な雰囲気を持っています。アルバムのオープニングにこのような噛み応えのある曲を選んだところに、アリシアのアーティストとしてのプライドを感じました。2曲目の”Time Machine”はどこかレトロで、重厚なファンクナンバーです。こちらも印象の強い曲です。

4曲目の”Wasted Energy”は、アフリカンミュージックのDiamond Platnumzをゲストに迎えたレゲエ調の曲です。アフリカンなリズムに、アリシアのフラットなヴォーカルがよく合い、独特な浮遊感が気持ちよく感じられます。5曲目の”Underdog” は、社会の下層で頑張っている人たちへ向けた応援歌。エド・シーランらとの共作曲で、シングルカットされてヒットしました。

アルバムの中盤は、サンファ、ミゲル、カリードといった、最近注目されている男性シンガーとのデュエット曲が並びます。この中から、ミゲルとの”Show Me Love”がシングルカットされました。こちらはアコースティックギターの音色をメインにしたメロウなナンバーで、派手さはないものの印象に残る曲になっています。そしてアルバムの後半は、ピアノの伴奏でじっくり聴かせる曲が続きます。穏やかさのなかに強いメッセージ性のある、とてもアリシアらしい曲”Good Job”でアルバムは終了します。

アリシア・キーズのニューアルバム 『Alicia』は、R&Bの枠にとらわれない、彼女の柔軟性がよく表れた作品だと思います。美しい音楽のなかに込められた熱いメッセージを、ぜひ聴いてみてください。


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