素晴らしい歌声 トニ・ブラクストン『Spell My Name』



こんにちは。
今回は、トニ・ブラクストン(Toni Braxton)のニューアルバム『Spell My Name』をご紹介します。

トニ・ブラクストン は、1993年のデビュー以来、出すアルバムは次々とヒット、グラミー賞も何度も獲得するなど高く評価され、誰もが羨む成功を手にした女性シンガーでした。ところが2010年代の初めごろに「引退したい」と漏らすようになり、周囲が必死に引き留める事態に。いったいどうなってしまうのかと多くの人が気を揉みましたが、2014年に、古くからの仕事仲間であるベイビーフエイスとの共作アルバム『Love,Mariage&Divorce』でシーンに復帰。このアルバムが大変素晴らしい内容で、グラミー賞のベストR&Bアルバムにも輝き、トニの復活に花を添えました。勢いを取り戻した彼女は、2018年に単独名義のアルバム『Sex & Cigarettes』を発表。これも良い作品で、彼女はめでたく完全復活を果たしたのでした。

ニューアルバム『Spell My Name』はこれに続くもので、彼女にとって10作めのアルバムになります。この作品の最大の聴きどころは「トニ・ブラクストンの歌声の素晴らしさ」、もうこれに尽きると思います。彼女はもともと、個性的な低音を聴かせるシンガーでしたが、キャリアを重ねたことにより、そのアルトヴォイスに磨きがかかり、ますます魅力的な歌声になりました。艶 があって声量も申し分なく、妖艶さを見せることもあれば、大人の女性の柔らかな包容力を垣間見せることもあります。円熟した大人の女性ヴォーカルの良さを堪能できるアルバム、といってよいでしょう。

曲のほうも、彼女の歌声を活かすべく、しっとりしたミディアム~スロウ系のメロウナンバーが中心です。アップテンポの曲もありますが、それすらも、どこか落ち着いた雰囲気が漂い、アルバム全体がアダルトなトーンで統一されています。また、流行のサウンドは、さりげなく取り入れるにとどめてあるので、彼女のイメージも損なわれず、聴きやすいアルバムに仕上がっています。曲数は、リミックスも含めて全10曲とコンパクトサイズですが、とにかく彼女の存在感がすごいので、充分に満足感は得られると思います。

それでは、アルバム『Spell My Name』の代表的な曲をご紹介しましょう。まずはオープニングの”Dance”です。2010年代の中頃のR&B界は、ブギーのリバイバルブームで湧きましたが、その頃によく聴かれたタイプの曲です。ちょっと懐かしくて親しみやすいダンスナンバーです。トニの声は重めですが、華やかなコーラスをあしらうことで、ダンスの軽快感が出ています。

それから、アルバムの先行シングル”Do It”。ピアノ伴奏による正統派のバラードで、感動がまっすぐに伝わってくる名曲です。アメリカのアダルト R&B チャートで一位を獲得しました。この曲は、ミッシー・エリオットが参加したリミックスも作られました。リミックスバージョンは 、グルーヴィーなR&B に仕上がっていて、こちらも良い曲です。

そして、タイトル曲の”Spell My Name”です。若い男性ヴォーカルとの掛け合いで歌われるのですが、この時のトニの表現力が素晴らしく、まるで舞台の上で演技をする女優を観ているかのようです。トニ・ブラクストンはただものではない、と実感するナンバーです。

トニ・ブラクストンのニューアルバム『Spell My Name』をご紹介しました。久々に登場した、聴きごたえのある女性シンガー作品です。ぜひ、聴いてみてください。

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