黒人音楽ファン必聴の大作 サラーム・レミ『Black On Purpose』前編
こんにちは!
2020年に発売された、サラーム・レミ(Salaam Remi)のアルバム『Black On Purpose』をご紹介します。今回は、その前編です。
サラーム・レミは、ヒップホップやR&Bのヒット曲を数多く世に送り出したプロデューサーです。代表作に、フージーズ(Fugees)の ”Fu-Gee-La” や、エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の ”Tears Dry On Their Own” などがあります。ヒップホップ由来のくっきりしたビートに優れたメロディーを掛け合わせ、親しみやすい曲に仕立てる名プロデューサーです。
プロデューサー名義のアルバムといえば、クインシー・ジョーンズの諸作品を思い浮かべる方も多いと思いますが、『Black On Purpose』もそういったタイプのアルバムです。サラームは制作の指揮をとり、彼が人脈をいかして集めたアーティストたちが、質の高いパフォーマンスを披露しています。
『Black On Purpose』は、人種差別に対する抗議活動「ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter-略称BLM)」に影響を受けて制作された作品で、黒人という人種がテーマになっています。アメリカで急速な拡がりをみせたブラック・ライブズ・マター。デモの様子などが日本でも報道され、黒人の人たちが置かれている厳しい環境が伝わってきました。『Black On Purpose』に収録されている ”No Peace” は、「No Justice,No Peace」という掛け声がデモのシュプレヒコールのようにも聞こえる、リアルなラップナンバーです。
そして『Black On Purpose』は、昨今のBLMのみならず、1950〜60年代に行われた公民権運動(人種差別の解消を求める運動)も思い起こさせる内容になっています。オープニングではマルコムXの演説が引用されています。また、黒人に対するリンチというショッキングな事件を歌ったビリー・ホリデイ(Billie Holiday)の”Strange Fruit”(1939)のカバーもあります(歌っているのはベティ・ライト(Betty Wright)です)。他にも、どことなくレトロな雰囲気を醸し出している曲が目につきます。
サラーム・レミは、BLMと公民権運動をつなげることによって、人種差別は長い時間が経過しても解消していない、と言いたかったのかもしれません。根の深い問題だ、とつくづく感じました。
後編に続きます。
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