『Originals』プリンスとたどる80’sポップの世界(前編)



こんにちは。

2016年に急逝した天才アーティスト、プリンス(Prince)。彼の”新作”となるアルバム『Originals』が、先日発売されました。これは、彼が精力的に創作活動をしていた80年代に、他のアーティストに提供する楽曲をプリンス自らが歌った音源を集めたアルバムです。この音源をもとにして、各アーティストはレコーディングを行いました。『Originals』のトラックリストは、懐かしいヒット曲でいっぱいです。今回は、それぞれの曲について感想を書いてみたいと思います。また、提供先のアーティストの動画もご紹介しますので、ぜひ『Originals』と聴き比べてみてください。

まず一曲目、アポロニア6(Apollonia6)に提供された”Sex Shooter”です。プリンスはアポロニア6の前にヴァニティ6(Vanity6)という女性グループを売り出しました。が、リードのヴァニティが脱退したので、後任にアポロニアを抜擢。それにともないグループ名も変更されました。この曲はシンセを最大限に活かして華やかさを出す一方で、重めのベースラインでうねりを作ったポップ・ファンクです。ノリやすい曲で、当時の私も気に入っていました。アポロニアの歌はまあまあでしたが、脇にいるメンバーのコーラスは、わりとしっかりしていました。『Originals』では、バックの演奏はアポロニア6版とほとんど同じで、 プリンスは艶のあるファルセットを聴かせています。正直言って、プリンスのほうが、アポロニアよりも色気があるなと思いました。

続いて、プリンスと関係の深いバンド、ザ・タイム(The Time)に提供された”Jungle Love”です。メンバーのコミカルなダンスも人気の、バンドを代表するヒット曲です。以前、「タイムのアルバムは、プリンスがほとんどひとりで作った」という記事を読んだことがありましたが、『Originals』によってそれが裏付けられた形となりました。タイム版は、プリンス版とほぼ一緒。ヴォーカルを差し替えただけのように聞こえるのです。タイムはバンドなのに、レコーディングに関係したのはモーリス・デイだけだったのか、と思ったら、ちょっとショックでした。『Originals』のプリンスは 、イントロからノリノリで、元気よく歌っているのが印象的でした。

次はバングルス(The Bangles)に提供された”Manic Monday”です。バングルスは80年代に活躍したキュートなガールズ・バンドです。”Walk Like An Egyptian”など、親しみやすいポップ・ロックがヒットしましたが、この ”Manic Monday” も人気がありました。バングルスが歌うと、プリンス・ナンバーも可愛らしく聞こえますが、 ”Manic Monday” は歌い出しのメロディーが”1999”によく似ていて、しっかりプリンス風味は出ていました。 『Originals』でのプリンスは、アコギを使って、オールディーズ・ポップ風な雰囲気を出していたのも、興味深いところでした。

続いて、シーラ・E(Sheila E)に提供された”Noon Rendezvous”です。彼女はもともとパーカッション奏者でしたが、プリンスの後押しで歌手デビューを果たしました。この曲は、ゆったりと聴けるバラードです。シンプルですが、サビの部分がちょっとせつないメロディー展開で、素敵な曲だと思いました。『Originals』版では、ピアノ伴奏によるプリンスのファルセットがとても美しいです。シーラ版とは異なり、心が洗われるような静かなバラードで、感動しました。

次は、前述のヴァニティ6に提供された”Make Up”です。ヴァニティ6といえば”Nasty Girl”が有名ですが、この ”Make Up” も刺激的です。この曲は、歌がどうこういうより、斬新なテクノ・サウンドを楽しむもので、ヴォーカルは語りのようなスタイルです。プリンスは、自らもばっちりメイクをする人だったので、その彼の口から「アイライン」とか「マスカラ」とかいう単語が出ると、妙に生々しい感じがしました。

続いて、マザラティ(Mazarati)に提供された”100 MPH”です。マザラティは、プリンスのバック・バンドであるレヴォリューションのメンバーも関わっており、いわゆるプリンスの関係者バンドです。 ”100 MPH” は、『Originals』収録曲の中でも、プリンス本人のイメージに近い曲なので『Originals』の音源をそのままプリンス名義で出しても、違和感はないと思いました。とてもかっこいい、ロッキッシュなファンク・ナンバーです。

次は、ケニー・ロジャース(Kenny Rogers)に提供された”You’re My Love”です。彼はカントリー出身の大物歌手で80年代に大人気でしたが、まさかプリンスの曲を歌っていたとは、知りませんでした。今回、ケニーのこの曲を初めて聴きましたが、AOR調のコンテンポラリーな仕上がりで、とても良かったです。そしてR&Bファンには嬉しいことに、バッキング・ヴォーカルを担当しているのが、エル・デバージ(El DeBarge )なのです!ぜひ、ケニー版の ”You’re My Love” も聴いてみてください。さて、元となった『Originals』のプリンス・バージョンですが、プリンスの声が若いのに驚きました。これはプリンス初期の録音で、その意味でも貴重なのでなないかと思いました。バックの演奏も、おそらく彼がすべての楽器をこなしているのでしょう。「生真面目な宅録青年」というプリンスの一面を垣間見たような一曲でした。

後編に続きます。

スポンサーリンク