ベイビーフェイス新作特集③ デュエットの名盤が、またひとつ
ベイビーフェイスとトニ・ブラクストンの
ニューアルバム”Love Marriage & Divorce”。 。
最初に言います。これは傑作です。
R&Bの基本である「歌」を大事にした、良質な作品です。
プロデューサー・ベイビーフェイスの個性がよく表れた楽曲。
全盛期の90年代さながらの、ふたりの歌唱力。
ともに素晴らしいです。
それでは、一曲ずつ聴いていきましょう。
1 Roller Coaster
もの静かで、少し悲しげなイントロで幕を開けます。
普通、アルバムのオープニングは大事な「つかみ」なので、
アップ調で、気分が高まるような曲を配置するものです。
が、本作のテーマは「恋愛 結婚 離婚」。
せつない曲からはじまるのも、納得です。
歌いだしはベイビーフェイスがさらっと歌い、
感情表現豊かなトニにつなげる構成です。
2 Sweat
少し重みのある前曲にくらべると、軽やかな感じの曲です。
洗練されていて、お洒落で、スムースジャズみたいですが、
サビではしっかりベイビーフェイス節になっています。
トニの「ためいき」もアクセントになり、
大人の雰囲気を醸し出しています。
3 Hurt You
シングルカットされて、アメリカのチャートでも
上位に入ったナンバーです。
ベイビーフェイスのピアノの弾き語り風ではじまり、
トニが歌いついでいくのですが、だんだんと盛り上がっていく
ドラマチックな展開です。
トニは、サビのところで「うなり」を入れたりして、
感情を力強く表現しています。
この曲は、ミュージックビデオもあります。
壁を隔てて離れ離れになっている男女(ベイビーフェイス&トニ)が
その思いの強さから、障害となっている壁を壊して
再会する、というストーリー。
「めぞん一刻」の四谷さんばりに、壁をぶっ壊すシーンが迫力あります。
4 Where Did We Go Wrong?
ベイビーフェイスのアルバム”The Day”のような
アコースティックギターをバックに、
しみじみと歌われる曲です。
カーティス・メイフィールドみたいな、ベイビーフェイスの
ファルセットが、聴きどころ。
トニは、ここでは控えめながら、美しく歌っています。
5 I Hope That You’re Okay
ここまではふたりの共演でしたが、
この曲はベイビーフェイスのソロナンバーです。
80年代のベイビーフェイスが好きな人にはたまらない、
アルバム”Tender Lover”を思わせる、優しくてきれいで甘い、
洒落たミディアムナンバーです。
このリズム音の軽さといい、エコーの響きまくる音響といい、
まるで80年代にタイムスリップしたかのよう。
なにより、ベイビーフェイスの歌声に全く衰えがなく
昔のままなのがうれしくて、涙まで出てきそうです。
2014年のいま、こんな曲が聴けるなんて、
R&Bを聴き続けてきて、本当に良かった…。
6 I Wish
トニ・ブラクストンが、ピアノの伴奏でじっくり歌い上げる、
スケールの大きなバラードです。
昔、トニの”Breathe Again”を聴いたときは、歌い方が個性的すぎて
うまいといっていいのか、よくわかりませんでした。
でも、この”I Wish”を聴くと、やっぱり
彼女は歌がうまいということが、よくわかるのです。
7 Take It Back
ほっと一息つける、心がなごむ一曲。
アコースティックギターが優しい印象です。
なんとなくボーイズⅡメンが歌ったら
似合いそうな気がしました。
8 Reunited
これは、80年代のアトランティックスター風、とでも
いいましょうか。
本当にメロディーの美しい曲で
ふたりのハーモニーもばっちりです。
9 I’ⅾ Rather Be Broke
トニがソロで歌うナンバーです。
トニのイメージに合った曲だと思います。
なかなか難しい曲なのですが、
余裕で歌いこなすあたり、さすがです。
10 Heart Attack
ちょっと意表を突かれた感のある、ダンスナンバー。
近頃人気の、80年前後のディスコ曲っぽい感じです。
ディスコにベイビーフェイスって、合うの?と
少々不安になりますが、そのあたりは
彼の声を電化処理することで、乗り切っています。
なんか「ラジオスターの悲劇」みたいに、なってるんですよね…。
アルバムのなかでは異質ですが、結構おもしろい曲なので、
ぜひ聴いてみてください。
11 The D Word
最後は、哀愁漂う、しっとりとした曲で、お別れです。
これは主にベイビーフェイスが歌っていますが、
トニのコーラスがとても美しいです。
せつなさに胸がしめつけられる、素敵な曲でした。
以上、”Love Marriage & Divorce”、いかがでしたでしょうか。
予想以上の良い出来に、私はとても満足しました。
これも、ダリル・シモンズのおかげかもしれません。
ベイビーフェイスとトニ・ブラクストンのコンビは
なかなかよい組み合わせだと思うので、
これからも続けてほしいです。
そして、ベイビーフェイスのオリジナルソロアルバムも、
あきらめずに待ち続けたいと思います。
Toni Braxton, Babyface – Hurt You
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