22年ぶりの新作 ザ・スピナーズ『Round The Block And Back Again』
こんにちは!
今回は、ザ・スピナーズ(The Spinners)のニューアルバム『Round The Block And Back Again』をご紹介します。これは昨年の8月にリリースされました。しかし、私はうっかりしていてその情報を掴み損ね、今年に入ってようやく聴くことができました。残念ながら昨年のあみーアワードで取り上げることはできませんでしたが、間違いなくこれは2021年の優秀アルバムのひとつだな、と思いました。
この作品の存在を知った時、70年代に大人気だったスピナーズが、今も現役で活動していることに大変驚きました。それもそのはずで、今作は22年ぶりのアルバムになるのだそうです。その22年前の前作も私は聴いた記憶がなく、私のなかで彼らの姿は黄金の70年代で止まったままになっていたので、突然の登場に驚いてしまったのです。といいつつも、ベテランの復活は、やっぱり嬉しいものですね。なんだかこちらも励まされて、元気になれるような気がします。
現在のスピナーズは5人体制で、オリジナルメンバーは、ヘンリー・ファンブロウ(Henry Fambrough)が唯一在籍している模様です。その他のメンバーもヘンリーより年齢は若いのかもしれませんが、いずれもベテランらしい風格が、ジャケット写真からは漂っています。
『Round The Block And Back Again』には、全13曲が収録されています。おそらく、オリジナルの新曲だと思われます(”So Much In Love”という曲がタイムスのカバーっぽいのですが、ところどころ原曲と違う感じになっています)。スピナーズほどのベテランになると、オリジナルの新曲でアルバムを作るのも大変だろうと思うのですが、彼らはそれをやり遂げました。まず、そこが素晴らしいと思います。
そして、それぞれの曲がまた、いいんですよね~! 70〜80年代の雰囲気の上に現代的なエッセンスが加えられ、ベテランの新曲としてふさわしいものに仕上がっています。歌がのりやすいメロディーとテンポは、ベテランヴォーカルグループの持ち味をうまく引き出していますし、多めに配置された小気味よいアップナンバーが、明るく溌剌としたイメージを作り上げています。
歌唱については、リードヴォーカルは固定せず、メンバーが交代で担当する形をとっています。グループものの醍醐味である、ベース担当の人による音程の低い歌も楽しめますよ。リード、バックコーラスともに、みんなのびのびと歌っている様子が微笑ましく、その気取らない姿に親しみを感じました。彼らのぬくもりのある歌声が、こちらの気持ちまで優しくしてくれるようでした。
それでは、アルバムの収録曲をいくつかご紹介しましょう。まずは最もおすすめの ”I’m In My Prime” です。これはスピナーズの代表曲”I’ll Be Around” のオマージュともいえる楽曲で、新しさの中にどこか懐かしさも感じられます。ゲストにサックス奏者のジャーメイン・ロックハート(Jermaine Lockhart)を迎えるなど、スムースジャズ風のスタイリッシュなアレンジで、スピナーズらしいスマートなソウルになっています。そして歌のバックで、いなせなリズムギターをかき鳴らすのは、あのレイ・パーカー・Jr(Ray Parker Jr.)だというではありませんか!これはレイ様ファンの私にとって、とても嬉しいサプライズ。この曲が、より一層素晴らしいものに思えるのでした。
”Cliche” は、70年代に活躍したヴォーカルグループならではの、こなれたコーラスワークが聴きどころです。懐かしのドゥーワップを思い起こさせる、明るくてリズミカルなナンバーで、おすすめの定番ソウルです。そして ”Missing Your Embrace” は、情感あふれるスイートなスロウ。ゆったりした八分の六拍子のイントロに低音の語りが入った時点で、辺りはロマンチックな雰囲気に包まれます。最後まで聴けば、感動で胸がいっぱいになる名バラードです。
以上、スピナーズのニューアルバム『Round The Block And Back Again』をご紹介しました。今回は、どちらかというと古典的な曲をお届けしましたが、これ以外のモダンな曲も良い出来ばえです。ぜひ、アルバム一枚まるごと聴いてみてくださいね。
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